ムライト支柱の鉄分の由来

セラミックス焼成時に一般的に使用される支柱はアルミナ約70%前後のムライト支柱です。この支柱にはいくらかの鉄分が入ってきますが、その由来には2パターンあります。

一つはプレスの金属金型由来で、特にI型支柱等の比較的肉厚の支柱は成型時のプレスを打つ回数が多くどうしても金型と擦れ合い鉄粉が支柱表面にうつりやすいです。もう一つは原料由来で、ムライト支柱の主原料は天然鉱物であるアンダルサイトであり大なり小なり原料の中に鉄分が入っており、その割合にもぶれがあります。

Mullite iron spots

尚、再生リサイクル原料を使うとこの様な原料由来の鉄粉が出る割合が低かったりしますが、支柱その物の性能から言うと天然鉱物のバージン原料からの方が良い物ができます。

因みに、支柱は通常直接製品に接する事は無いですので、焼成時に支柱に含まれる鉄粉が製品に悪影響を及ぼすという事はありません。

 

反応焼結SiC(Si-SiC)の焼成直後

下の写真は焼成直後の反応焼結SiCのローラーチューブです。Si SiC Roller tube just after fired見た目は金属のようにキラキラしていますが、これは含浸しきれなかった金属シリコンが表面に付着しているためです。この後サンドブラストで表面の余分な金属シリコンを削り取り、つや消しグレーのいつものSi-SiC耐火物の表面状態になります。

焼成後の瓦

焼成されて炉から出てきたばかりの瓦です。近づくとかなりの熱を感じます。Fired roof tile 1約100mの長さのトンネル炉を10時間以上かけて台車が通り瓦は焼成されます。一つの台車はちょっとした小部屋くらいもの大きさがあります。

焼成前の瓦

屋根の瓦も焼き物・セラミックスです。水分約20%くらいの原料粘土を巨大な土練機でトコロテンの様に押し出して長い形状に成型し、それを切断してプレスすると瓦の形になります。下の写真はプレス成型直後の瓦です。

Raw roof tile ARaw roof tile B

手である程度の力を加えると変形します。この後、乾燥・焼成の工程になります。

SiCセッターの高温焼成によるラミネーション

下の写真は1,560℃焼成で使用されたSiCセッターで、セッターの一部が膨れ上がった為、膨れた箇所を切断した写真です。

SiCセッター高温ラミネーション

数百枚使用されたSiCセッターのうち1枚にこの様なラミネーションが発生しました。原因はSiCセッター製造工程で内部に閉じ込められた空気です。このセッターの厚みは15mmで比較的厚めの板となり、厚いが故にプレス成型時に内部に空気が閉じ込められやすく、それでも一般的な1,200~1,350℃くらいの焼成温度では影響ないのですが、1,560℃等の高温焼成ですと、この様に閉じ込められた空気が急激に膨張し、セッター自体も膨れ上がるというケースが稀にあります。

因みにカタログ上、最高使用温度1,500℃となっておりますSiC(品番:FR-90)セッター/棚板ですが、実際は焼成条件等にもよりますが、1,500℃以上でも問題なく使えたりします。

ムライト板のくり抜き加工

ムライト質の板をウォータージェット加工してくり抜いたものです。ウォータージェット加工品1

ウォータージェット加工は費用は高いですが、焼成後の板を加工しますので、曲線でも切断面がきれいかつ正確に加工できます。ウォータージェット加工品アップ

ムライト板の場合は、焼成前の生の状態で穴開けポンスを使ってくり抜き加工したり、切取り加工したりもできますが、加工面はもっとぼそぼそで粗くなります(費用はこの生加工の方が安いです)。

尚、SiC板の場合は原料に粒度の粗い物も入っている為生の状態での加工はできず、焼成後は非常に硬いのでこのムライト板の様な大きな穴開け加工はできません。

SiC耐火物焼成炉

SiC棚板やセッター、ビーム、パイプ、レンガ等のSiC耐火物も焼成して製造する言わばセラミックスです。焼成炉はバッチ式のシャトル炉です。

SiC耐火物焼成炉

耐火物を焼成しますので、高温且つ長く焼成します。

SiC棚板の鉄分と色

前々回のブログ「SiC原料と鉄分」の通り、グレードの落ちるSiC原料の場合は鉄分が多く含まれたりします。鉄分は耐火物の新品時には赤茶色に見えなくても、一度焼成で使用すると赤茶色に出てきたりします。

下の写真は2~3回焼成に使用した後の他社製のSiC棚板(SiCプレート)です。他社SiC棚板鉄粉1

側面に赤茶色の酸化鉄が出てきております。

この種の酸化物結合SiC耐火物においては、ある程度鉄分が含まれるのは普通で性能には影響ないのですが、鉄分があまりに多いと、下の写真の様にコーティング面を突き破って表面に赤茶色の鉄分が析出してしまい、それが上にのせたセラミックス製品に色移りしたり、SiC棚板底面から鉄分が析出して落下した場合は、下の段の製品に色移りしたりと不具合が発生します。

他社SiC棚板鉄粉2

尚、ユーザーの炉で使用後に初めて赤茶色に出る理由は、酸化鉄でもFeO, Fe3O4の状態では色は黒色で、焼成雰囲気によって酸化鉄の組成がFe2O3になると色が茶色になる事に由来します。