SiC棚板の酸化とボロ降り

下の写真は陶器の酸化焼成に使われたSiC棚板の裏面です。

SiC棚板裏面
SiC棚板裏面
裏面アップ
裏面アップ

このSiC棚板は他社製で約2年ほど使用されておりますが、このところSiC棚板の裏面からボロが降って陶器の製品の上にくっ付いてしまうという問題が起きております。実際に指で裏面をなでてみると確かに小さな粒状の物がとれて指先にくっつき、また裏面を手でこすってみてもパラパラと粒が落ちるといった状態です(下写真)。
SiC棚板裏面チェック
SiC棚板裏面ボロふり

通常この手の酸化物結合SiC棚板は約300~600サイクル使用できるというのが一般論ですが、この棚板の使用期間は約2年間で約200サイクル弱使用しただけで、表面のSiC粒がポロポロ取れる状態にまで劣化してしまっております。この様な状態ですと、台車を動かしてトラバーサーの上を通過した時の振動や、焼成過程で棚板が熱で膨張した時などに棚板の裏面からボロが下の製品に落ちてしまいます。

通常よりも早くSiC棚板が劣化した原因として考えられるのは焼成雰囲気の問題です。SiC耐火物は酸化される事により劣化します。今回のケースも焼成温度が1200℃弱の酸化焼成ということで、一般的に1150℃±50℃くらいの範囲がSiC棚板が一番酸化されやすい温度帯と言われております(但し、雰囲気によってもかなり差がありますので、一概に1150℃前後が全て一番良くないとも断言できませんが)。

また、SiC棚板自体の性能によっても当然差は出てきます。「性能の良い耐久性のあるSiC棚板=酸化されにくい棚板」という事が言えます。

Si-SiCロッド

Si-SiC(反応焼結SiC)ロッドのご紹介です。

Si-SiCロッド φ10 x L 100mm
Si-SiCロッド (φ10 x L 100mm)

写真の物は直径φ10mm、長さ100mmのムク材です。Si-SiCは機械的強度が非常に強く、曲げ強度は室温でも1350℃でも250Mpaあります(SiC耐火物の機械的強度と温度の関係はこちらのブログをご参照下さい)。Si-SiCの最高使用温度である1350℃を超えない条件ですと、吊るし焼きの支持棒には最適です。

又、炉の中でステンレス等金属を使うと徐々にやせ細って行ったりしますが、Si-SiCのロッドの場合はやせ細って行くことは無く、又強度の強いSiC耐火物の中でも更に強度のある物となりますので、安心してご使用頂けます。

焼却炉用SiC製耐火レンガ

焼却炉の内張等に使われるSiC製耐火レンガのご紹介です。

SiC並型レンガ
SiC並型レンガ (230x114x65mm)

焼却炉内張に使われるSiC耐火レンガは、セラミック製品の焼成に使われる通常のSiC棚板よりも更に、高温耐酸化性能、高温耐酸・耐アルカリ腐食性能、高温強度が求められます。当社販売のSiC耐火レンガは、SiCが元々持っているこれらの特性を最大限に高めるために専用の特殊配合により作られます。表面にぶつぶつとした物が浮き出ているのもこれらの特性を持たせた特別配合の為です。

又、並型レンガ以外にも燃焼室水管壁等、様々なサイズ・特殊形状の物がございますのでお問合せ下さい。

SiC特殊形状レンガ
SiC特殊形状レンガ

焼却炉内張用SiC製耐火レンガ代表値

  • 化学成分/SiC =約85%  Al2O3=約3%  SiO2=約10%
  • 見掛気孔率 14%
  • カサ比重  2.6

電子セラミックス焼成用セッター

電子セラミックス焼成用アルミナセッターDKA-86のご紹介です。
アルミナ・ムライトセッターDKA-86
アルミナセッターDKA-86

アルミナセッター自体の かさ比重を低く抑えて高気孔率にすることにより、ワークの脱バインダー性を向上させております。セッター原料は微粒構成の為、加工性に優れ研磨加工によりセッター表面を平滑に仕上げる事ができ、ワークのキズ不良を軽減します。

又、特殊な製造方法により高気孔率でありながら高強度を保ち、均一な品質を達成しており、肉厚の薄い軽量セッターが供給可能です。

DKA-86 : 150x150x2t 両面研磨品
DKA-86 : 150x150x2t 両面研磨品

アルミナセッターDKA-86代表値

  • 常用使用温度 1,400℃
  • 化学成分 / Al2O3=約78%  SiO2=約22%
  • 見掛気孔率 33%
  • 見掛比重 3.3
  • かさ比重 2.2
  • 曲げ強さ   19MPa

耐火物の形状と割れやすさの関係

同じ耐火物でも形状によって割れやすさ/割れにくさには違いがあります。耐火物の割れ(クラック)は、端と中心や表面と内側などに温度差が出来た時に生まれる”膨張・収縮の差=歪”に耐火物が耐えられなくなった時に発生します(詳しくは以前のブログ「SiC棚板が割れる原因とスリット(切込)の目的」をご参照下さい)。

例えば長方形の板の場合と正方形の板の場合、割れやすさには差があります。

長細い形状の板の場合、昇温時の伸び、降温時の縮みといった歪を長手方向の伸び縮みで吸収し、結果比較的割れ難くなります。

形状と割れ1

一方正方形に近い形状の場合、昇温時の伸び、降温時の縮みの歪の逃げ場がなく割れ(クラック)が発生しやすくなります。形状と割れ2

特に降温時に割れが発生しやすいと言われており、この場合、温度が下がって来た端は収縮し始めますが、中心部はまだ温度が高く膨張したままで、その結果縮もうとする端が縮みきれずに端から中心部に向かってクラックが入るという現象です。

Re-SiC(再結晶SiC)サヤ・匣鉢

再結晶SiCサヤ280x280xH140mm
再結晶SiCサヤ280x280xH140mm

上の写真は再結晶SiC(Re-SiC)のサヤ・匣鉢です。                   サイズは外寸で280x280x高さ140mmで、肉厚は6mm弱です。

再結晶SiCの最高使用温度は1600℃で、SiC耐火物の中では一番高温で使える部類になりますが、再結晶SiCサヤのその他の特徴は

一般的なアルミナ・ムライト・コージライト質サヤに比べ

  • 熱伝導率が格段に良い
  • 熱衝撃(サーマルショック)に対して強く、迅速焼成に対応できる
  • 材質その物に強度があるのでサヤの肉厚を薄くできる
  • 成分はSiC99%なので、シリカ(SiO2)フリーで焼成物との反応が少なく、又粉体の引っ付きも少ないのでメンテナンスが楽
  • ボロ降りが少なくコンタミの心配も少ない

と言った事が揚げられ蛍光体の焼成等に使用されます。

但しSiC耐火物全体に言える事ですが、金属とSiCは反応しますのでフェライト等を直接SiCサヤに入れる使い方はお勧めしませんので、その場合は中に小さなアルミナ質サヤを何個か入れて使われる場合もあるようです。

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Si-SiC(反応焼結SiC)バーナースリーブ ・ ラジアントチューブバーナー


Si-SiCバーナースリーブφ120(φ104)xL600mm
Si-SiCバーナースリーブφ120(φ104)xL600mm

上の写真はSi-SiC(反応焼結SiC)バーナースリーブ:サイズ外径φ120mm(内径φ104mm)x長さ600mm です。

Si-SiC(反応焼結SiC)は高強度・高熱伝導率・緻密質による高い耐酸化性能から、高性能バーナースリーブや、ラジアントチューブバーナーの内筒管/外筒管に使われます。

下の写真はSi-SiCラジアントチューブバーナーの内筒管で、サイズは外径φ80mm(内径φ66mm)x長さ1400mm です。


Si-SiCバーナースリーブφ80(φ66)xL1400mm
Si-SiCラジアントチューブバーナー内筒管φ80(φ66)xL1400mm

当社では、他社ではなかなか出来ない大型バーナースリーブも供給可能です。但しSi-SiC(反応焼結SiC)の場合は最高使用温度が1350℃ですのでバーナー部の最高温度をご確認の上お問い合わせ下さい。

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アルミナ質支柱がSiC棚板に引っ付く原因は?

以前「SiC棚板の裏側に支柱が引っ付いてしまうので、支柱の耐火温度が足りないのでは?」というご質問を頂きました。前回のブログの通り、アルミナ質支柱の耐火温度は1,500℃です。では支柱がSiC棚板の裏側に引っ付く原因は何かと言うと、支柱の方が原因ではなく、焼成時にSiC棚板の表面に生成されるSiO2(シリカ)が原因です。


SiC棚板裏側の支柱跡
SiC棚板裏側の支柱跡

焼成時にSiC表面が酸化されるとSiO2(シリカ)が生成されますが、SiO2は高温時はネバネバした状態で、常温になるとガラスのように固まります。その為、焼成を重ねるにしたがって棚板と接している支柱は引っ付きやすくなります。この引っ付きを防ぐには支柱の方にアルミナコーティング剤をこまめに塗るのが効果的です。

アルミナ質支柱の耐火温度

アルミナ質支柱
アルミナ質支柱
アルミナ支柱とSiC棚板
アルミナ質L型支柱とSiC棚板

通常使われているアルミナ質支柱は、アルミナ約70%ぐらいで、耐火温度は1,500℃です(製造時に1,500℃以上で焼成しております)。圧縮強度も680kg/cm2 以上あります。

セラミック焼成に使われる支柱はこの手のアルミナ質支柱が一般的です。

I型・L型・サイコロ型 各種ございます。

SiC耐火物の寿命

時折、「SiC耐火物は何年くらい使えるのか?」と聞かれる事がありますので、今回はそのSiC耐火物の寿命についてお答えいたします。


酸化物結合SiC(カーボランダム)棚板台車
酸化物結合SiC(カーボランダム)棚板台車

Si-SiC(反応焼結SiC)ビーム組み台車
Si-SiC(反応焼結SiC)ビーム組み台車

SiC耐火物の寿命を言う時によく「何年くらい使える物なのか?」と聞かれますが、専門的見地から言いますと、寿命は”何サイクル”という尺度で計ります。1サイクルとは”1回常温から最高温度まで上がりまた常温に戻る”事です。即ちトンネル炉では炉に入ってから出てくるまでで1サイクル、バッチ式のシャトル窯ですと1回窯に入れて出すまでで1サイクルです。

当然、毎日炉に入る場合と1週間に1回しか炉に入らない場合とでは耐火物の耐用年数は変わってきますので、お客様の使用頻度を完全に把握しない限りは年月では判断できません。

各種SiC耐火物の基準耐用サイクル

  • 酸化物結合SiC(カーボランダム)=約300~600サイクル
  • 再結晶SiC(Re-SiC)=約500~800サイクル
  • 反応焼結SiC(Si-SiC)=約2,500~3,000サイクル

上記の数字はあくまでも1つの基準であり、当然ながら、SiC耐火物の形状、炉のヒートカーブ(昇温・降温スピード)、炉内の雰囲気(酸化・還元雰囲気等)、棚組みの仕方、焼成物の形状や重量、等々の諸条件によってSiC耐火物の劣化具合は大きく変わってきます。

又、SiC耐火物の寿命が来るとはどういう事かというと、SiCが酸化・分解されSiO2が生成され、SiC成分が減ってくることにより白っぽく変色し、膨張し、強度が下がり、曲がりや割れが発生することです(酸化され劣化した酸化物結合SiC耐火物の事例はこちらをご参照下さい)。

上記数値の通り、SiC耐火物の中では緻密質である反応焼結SiC(Si-SiC)が一番酸化されにくい性質から、一番寿命が長いです。