反応焼結SiC(Si-SiC)の強度

反応焼結SiC(Si-SiC)ビームは常温曲げ強度・高温曲げ強度共に250Mpaと台車の構造材としては非常に丈夫な耐火物です。

しかしこの反応焼結SiCビームでもハンドリングの時にちょっと硬いものにぶつけたり、低い位置からでも落としてしまうと下の写真の様に簡単に折れてしまいます。2014 6 SiSiCberam 折れ

高強度な耐火物であっても、耐火物はセラミックス製品であり、金属とは違い衝撃に対しては弱いです。2014 6 SiSiCberam 折れUP

ですので、全長が長い割に細いものや、サイズが大きい割に薄すぎる板などは、炉内での使用上は問題ないとしても、納入までや納入後・操業時のハンドリングを考えた時、非常に割れやすい為お勧めできないという場合もございます。

アルミナ・ムライト質耐火物の熱間荷重による収縮

下の写真は使用された、アルミナ約60~70%のアルミナ・ムライト質 L型支柱です。

L型支柱サイズばらつき

元は同じ高さのL型支柱でしたが、荷重のたくさんかかる箇所で多く使われた物と、そうでない物・新し目の物とはこれだけ高さに差が出てしまっています。

アルミナ・ムライト質の白物耐火物は熱間荷重により少しづつ収縮されてゆきます。「高温で荷重がかかると物がつぶれてゆく」という比較的イメージしやすい現象かと思います。

ちなみにSiC耐火物の場合は「最高使用温度まで機械的強度は落ちない」という特性と、「焼成雰囲気中でSiCが酸化されることによってSiO2が生成され少しずつ膨張してゆく」という性質から、逆に使われれば使われるほど膨張し寸法は大きくなります。

プレス成型SiCサヤ(匣鉢)

プレスSiCさや

プレス成型品である酸化物結合SiCで作った外径330mmのサヤ(匣鉢)です。成型方法がプレス成型ですのであまり立ちの高いものはできませんが、写真のような形状は製作可能です。尚、内側の白色部分はアルミナ系コーティングが施された状態です。

SiC棚板3段積みローラーハース

ローラーハースインドネシア6Hrs 1280℃

SiC棚板を使用しローラーハースで3段積み焼成しているケースです。

炉のIn/Out時間は約6時間、最高温度は1,280℃。

通常のシャトル炉やトンネル炉と比べ、急熱・急冷の焼成条件であるローラーハースはヒートショックが厳しく一般的には棚板が割れやすい条件ですが、SiC棚板が使えるケースもあります。

SiCプレートの穴加工について

SiC耐火物は非常に硬い材質の為、焼成後の後加工は結構難しく、特に穴加工の場合はダイアモンドのドリルで加工することになりますが、ドリルが摩耗してゆくと開けられる穴の直径がだんだんと小さくなり、特に穴直径の寸法公差が厳しい場合ですと、すぐにドリルを交換しなくてはならなくなり高価なものとなってしまいます。

しかしながら、プレス成型品である酸化物結合SiCの場合、直径φ8mm以上の穴ですと金型から穴を作ることができ、加工無しで穴付きのSiCプレート等ができます。

穴付き酸化物結合SiCプレート

この場合、金型で寸法が決まってきますので、穴の大きさも変わる事無く量産でき、最初に金型代はかかりますが製品単価自体は後加工品よりも安く抑えられます。

ただし金型から作る場合はある程度のまとまった数量が必要となりますのでご相談ください。

コージライト質スペーサー・ムライト質スペーサー

コージライト質とムライト質のスペーサーのご紹介です。

上:コージライト質    下:ムライト質
上:コージライト質φ69xL40mm      下:ムライト質φ62xL60mm

上の茶色い方がコージライト(Cordierite)質で、下の白い方がムライト(Mullite)質です。

ヒーターの位置決め・絶縁用のスペーサー等に使用されます。ムライト質の特徴は低膨張率でヒートショックに強く、ムライト質の特徴は耐火度がコージライト質よりも高い点です。それぞれの材質の原料配合、使い方や使用目的等により異なりますが、例えば一般的なコージライト質耐火物は約1200℃以下、ムライト質耐火物は約1300℃まで使えます(アルミナ配合を90%くらいまで上げればMax. 1750℃)。

支柱をSiC棚板の中心に置くとSiC棚板が割れます

棚板は3本の支柱で支えるのが一番安定し良いとされています。2013Dec支柱組み方1blog

 

一方、焼成製品の重さによってSiC棚板が割れたり曲がったりしないようにと、棚板の真ん中にも支柱を置こうとする方が時折いらっしゃいますが、この棚組方法は非常に危険で逆にSiC棚板の割れを引き起こしてしまう可能性が非常に高いです。2013Dec支柱組み方2blog

 

炉内で温度が下がる過程で、熱伝導率の良い板形状のSiC棚板は端の方から比較的早く温度が下がってゆきつつも、棚板中心部分は冷め難い為、最後まで温度が高い状態にあります。一方、支柱はアルミナ・ムライト質でSiCよりも熱伝導率は10倍悪いとも言われており、且つムク形状の為、支柱の方はなかなか温度が下がりません。2013Dec支柱組み方1裏最終

となると下のイメージ写真の通り、蓄熱された支柱がSiC棚板中心部分に接触していると支柱から棚板中心部分へ熱を与え続ける事となり、その結果、ただでさえ元々温度が高い棚板中心部分が更に熱くなってしまいます。2013Dec支柱組み方2裏最終最終

 

SiC棚板含め耐火物が割れる一番大きな原因は温度差=ヒートショック(熱衝撃)ですので、良かれと思って置いた中心の支柱が、逆にSiC棚板に熱的ショックを与える事となり、結果棚板の割れを引き起こしてしまいます。

耐火物の使用にあったっては、1つの物に関してできるだけ温度差が付かない様な設置方法・使用方法が重要になります。

大型SiCスリーブ

大型スリーブ形状SiC耐火物のご紹介です。
2013Nov SiCスリーブ445-425x380mma

2013Nov SiCスリーブ445-425x380mmb

サイズは 外径φ445mm x 長さ380mm  肉厚10mm です。材質は酸化物結合SiCで、鋳込み成形品ではなくプレス成形品のSiC耐火物です。

Si-SiC(反応焼結SiC)とは違い緻密質ではありませんが、最高使用温度は1,500℃で単価も同じSiC耐火物類の中では最も安価な物となります。

耐火物お問い合わせの際のポイント

耐火物は使用条件に合った物を適切な方法で使用しないと、その性能を発揮できなかったり、製品に悪影響を及ぼしたり、場合によっては割れ・曲がり・反応等々で窯内事故につながる危険もございます。またやみくもに高価なハイスペックな物を使用してももったいない事になってしまいます。各種板

SiC系耐火物の種類でも、酸化物結合SiC、反応焼結SiC(Si-SiC)、窒化物結合SiC(N-SiC)、再結晶SiC(Re-SiC)、等種類があり、白物系耐火物でもコーディライト系からムライト系、アルミナ系等々様々な種類がございます。我々(株)大幸セラミックは耐火物のプロフェッショナルとして最適な材質、最適な形状や厚さ、最適な使用方法等を提案・アドバイス・確認する事が最も重要な仕事と考えております。

最適な耐火物をご提供するためには、まずは使用条件を確認させて頂く事が不可欠ですので、お問い合わせの際には是非下記ポイントもご連絡ください。

  1. 最高使用温度(焼成温度):耐火物の大まかな材質を選定します。
  2. 焼成の時間(炉に入ってから出てくるまでの時間):熱衝撃(ヒートショック)の度合いを確認します。
  3. 炉の種類、耐火物の組み方や使用方法、焼成物の重量や載せ方: 材質選定や形状・厚み等を選定します。
  4. 焼成物の詳細:耐火物に対しての反応性や、耐火物に要求されるポイントを確認します。

また使用条件以外に必要な情報として、現状の必要数量、テストの場合うまくいった後の将来的な必要数量を是非ご連絡ください。数量によって製造の可否や対応方法が変わってきます。

その他に「現状問題があって改善したい」「耐火物を使ってもっとこういうことをしたい」等々、お問い合わせ頂いたバックグラウンドもお聞かせ頂ければ、何か良いヒントになるかもしれません。

最適な耐火物を絞込み、確度の高いご提案・お見積もりをさせて頂く為に、情報提供ご協力頂ければ幸いでございます。