SiC棚板破断面焼成テストの比較まとめ

過去3回にわたり比較試験してきたSiC棚板の破断面の焼成テストのまとめです。SiC cross section comparison 1

  • 上段左:新品を割った物=全体的に光沢有り
  • 上段右:800℃の素焼焼成に入れた物=SiC粗粒部に少しだけ光沢が残る
  • 下段左:1240℃酸化焼成に入れた物=完全につや消しマッド
  • 下段中:1300℃還元焼成(A製陶所)=SiC粗粒部が紫っぽく変色
  • 下段右:1300℃還元焼成(B製陶所)=SiC粗粒部が緑っぽく変色

この様に焼成雰囲気によってSiC棚板の破断面の見た目/状態が変化しますので、SiC棚板が割れた時の状況がこれらの情報を元にある程度推測できます。

SiC棚板断面の焼成テストその3(還元焼成)

引き続き1300℃還元本焼成の炉に入れた後の新品SiC棚板の破断面の写真です。(1300℃還元焼成:A製陶所)SiC cross section reduction fired 1300C 1(1300℃還元焼成:B製陶所)SiC cross section reduction fired 1300C 2

写真の通り、SiC粒径の細かい箇所は酸化焼成時と似たようなつや消し状態になりましたが、大きめの粒径部分はつや消しにはならずに紫色や緑色のような虹色っぽい色が出ており、このキラキラの色合いは新品棚板を割った破断面でも出ていなかったものです。

この様に還元焼成の場合の破断面は酸化焼成の場合と違い、SiCの大きな粒に光沢をもった色が付きます。

この原理ははっきり判らないのですが、焼成過程で大きめのSiC粒表面が一度酸化されSiO2皮膜ができ、その後還元帯に入った時点でSiO2皮膜がいくらか奪われ薄膜ができ「薄膜干渉」によって光の屈折の強調が起き色が付いた可能性もあります。

尚、同じ還元焼成でも還元度合いや時間が異なることによりこの薄膜のでき方(厚み)が変わり、よって”A製陶所”と”B製陶所”の様に色も異なってくるのではと考えられます。

SiC棚板破断面の焼成テストその2(酸化焼成)

前々回の記事で「新品SiC棚板破片を800℃の素焼き窯に入れたらキラキラしていた破断面が酸化されつや消しになった。」と報告しましたが、1200℃くらいの酸化本焼成では破断面がどう変化するかをテストしました。

下の写真は1,240℃の酸化本焼成の炉に入れた後の新品SiC棚板破片の破断面の写真です。SiC cross section oxidation fired 1240C

この場合も新品を割った時にはキラキラしていた破断面が酸化されつや消しになりましたが、800℃素焼きの時よりも更にマットな感じになり、大きめのSiC粒の部分でも(800℃素焼き時と違い)キラキラは残らずに全てつや消し状態になっています。

ヒートショックによる割れは800℃以下の温度帯ですので、前々回のテスト結果と合わせて考察すると、炉で使用したSiC棚板が割れた時の破断面がこの写真の様に完全にマットなつや消しになっている場合は昇温時の800℃までに棚板が割れ、その後1,200℃くらいの酸化焼成にさらされて破断面がつや消しになったという事で、SiC棚板は昇温時に割れた可能性が高くなります。

SiC耐火物焼成後の色の変化

SiC棚板等のSiC耐火物を焼成した後は色が濃くなるという現象があります。下の写真は新品未使用SiC棚板の破片を更に割り、片方を1,300℃還元焼成の炉に入れた物です。Color chage of SiC plate写真の通り、左側の還元焼成後の物は新品時に比べ濃いグレーになっています。これは還元焼成によってSiC棚板表面の分子レベルでの酸素欠損が起きた為と考えられます。ですので酸化焼成の場合は焼成物から酸素を奪う作用が働きませんので、この様な色の変化は通常ありません。

因みにアルミナ系耐火物でも同じく、酸素欠損が起こると白色からグレーや黒へと色が濃くなる場合があります。

SiC棚板破断面の酸化温度の検証テスト

SiC棚板が低温時に(物理的な力で)割れたのか、焼成時の高温時に(ヒートショックで)割れたのかは破断面の光沢度で判断できるという記事は以前掲載しましたが、更に突っ込んで、その割れがヒートカーブ中の昇温時か降温時かの判断ができるのかどうかの検証です。

焼成最高温度1300℃等でもSiC棚板がヒートショックで割れるのは赤熱状態より低温の800℃以下の温度帯です。仮に800℃くらいの温度ではSiC棚板破断面は酸化されない=つや消しにならないという事であれば、判断面がつや消しになったのは一度それ以上の温度にさらされたという事になり=昇温時の割れという事になります。

下の写真は常温で物理的に割ったSiC棚板(左)を800℃の素焼の炉に入れた結果(右)です。SiC surface change見ての通り、破断面が酸化されつや消しになりました。この結果、降温時のヒートショック(冷め割れ)でも破断面がつや消しになりうるという事で、結論としては「破断面が酸化されつや消しになっている場合は高温時に割れた事は判っても、昇温時の割れか降温時の割れかの区別はつかない」という事になります。

中国製SiC棚板使用による支柱へのSiC粒付着

中国製SiC棚板の問題点の追加です。

下の写真は中国製SiC棚板と一緒に使われたムライト系L型支柱(日本製)ですが、棚板の裏面と接した支柱の端面にSiC粒が付着してしまっています。

Support used with Chinese SiCSupport used with Chinese SiC bかなり使い込まれたSiC棚板と支柱ではまれにSiC粒が少しだけ支柱に付くケースはありますが、この様な比較的新しい支柱にこれだけ大きなSiC粒が付着しているのは中国製SiC棚板が原因です。

中国製SiC棚板はSiC自体の結合力が弱い為、使っていてもSiCのぼろ降りがおきるくらいであり、また耐酸化性能が落ちる為、棚板表面が酸化されSiC からシリカ(SiO2)が生成されやすく、シリカは冷えると固まりますので棚板側が支柱をえぐり取ったり、棚板本体のSiC粒が支柱にくっついて剥離したりします。こうなってくると支柱からSiC粒を取るのも難しく、アルミナを塗ってもSiC棚板と支柱はまたくっついてしまい、結果支柱にもダメージを与えた形になってしまっています。

中国製SiC棚板の特徴 その3(鉄分の問題)

中国製SiC棚板の主な特徴として最後に挙げるのが鉄分の問題です。

下の写真は何回か焼成に使われた(まだ比較的新しい)中国製SiC棚板です。

Chinese SiC Plate iron1 Chinese SiC Plate iron2

鉄分の茶色がひどく、コーティング層をも突き抜けたりしており、これでは焼成製品に鉄の茶色が色移りしてしまいます。

SiCの原料は精錬されたインゴットを粉砕して作られますが、SiC原料製造の品質管理の段階で既に鉄分の多い原料が作られるケースが多く、原料価格は安いのですが品質も価格相応です。またSiC棚板製造メーカーにおいても管理やノウハウのレベルが高くない場合はSiC棚板に鉄分がさらに混入してしまいます。

以上3回に渡って見てきた中国製SiC棚板の問題点ですが、これら以外にも新品時から既に棚板が曲がっていたり、使用して半年くらいで棚板が曲がり出したり、白っぽくなる酸化膨張が早かったり、表面にバリがあり平面でなかったり等々、色々なケースがある様です。

中国製SiC棚板の特徴 その2(成形の問題)

中国製SiC棚板の特徴のひとつに、成形の問題があります。

下の写真はコーティングを取ってSiC棚板の地肌が見える状態にしたものです。Chinese SiC Plate lax1 chinese SiC Plate lax2この手のSiC棚板はプレス成形で作られますが、見て判る通り同じ板でも密になっている部分となっていない部分の差が激しく、また板によっても違いが大きいです。

原因は、SiC原料の配合、混錬、状態管理や金型への原料充填、プレス機の性能、金型の剛性など様々考えられます。SiC原料の流動性の悪さから、ある程度の見た目の不均一は仕方ないにせよ、この様に大きくばらつきがあると、割れや曲がりの原因となりますし、原料が締まって成形されていないとSiC粒のぼろ降りの原因にもなります。

流動性の悪いSiCをいかにしっかり均一に成形できるかが、SiC棚板の性能を左右する一つの重要な要素です。

尚、棚組み下段へのSiCのぼろ降りは成形の問題以外に他の原因もありますが、残念ながらSiCのぼろ降りは中国製SiC棚板の一つの特徴でもあります。

中国製SiC棚板の特徴 その1(コーティング問題)

中国製SiC棚板はその品質的な問題から日本ではあまり見かける事は無いですが、例を挙げてその特徴を見てゆきます。

下の写真は中国製SiC棚板のアルミナコーティングです。新品状態はまだ焼きついていないのでコーティング面が柔らかいのは普通なのですが、この板はあまりにも柔らかすぎ、指で軽くこすってもどんどんコーティングが取れてしまいます。Chinese SiC plate coatingこうなると、棚板輸送中でもどんどんコーティングが取れてしまうという事になります。因みにこの板は焼成後でもコーティングの固着が弱くどんどん取れていってしまう状態でした。

SiC棚板のコーティングは製品との引っ付きを防ぐ為の物であり、製品が強く引っ付こうとする時にはコーティングの細かい粒子が製品と一緒に少しづつ剥がれる事により製品自体の引っ付きを防いでいるのですが、コーティングが必要以上に柔らかく容易にどんどん剥がれてしまうとコーティングの持ちが悪く、すぐにコーティングが効かなくなるという事になります。

重量物焼成に使用されるSiC製I型支柱

酸化物(シリカ)結合SiCの支柱です。20170519_SiCsupport04247

写真の物は高さ350mmで上下頭部分は80x80mmです。

一般的にはムライト質の白色の支柱が多く使われますが、碍子(がいし)等の重量物を焼成される場合はSiC製支柱も使われます。前々回のブログ記事にあるように、ムライト製支柱の圧縮強度は約680kgf/㎠ですがこのSiC製支柱の圧縮強度は約1,500kgf/㎠です。又、ムライト支柱は熱間荷重により縮んで行きますが、SiC支柱にはそれがありません。

但し、SiC支柱とSiC棚板は焼成後引っ付く可能性がありますので、基本的には組みっぱなし(焼成毎に棚組をくずさない)の台車に組まれる場合が多いです。

尚、当社でもこの手のSiC支柱は在庫しておりませんので、基本的には全て受注生産となります(受注生産の場合は最低ご注文数量の設定がございますので別途お問い合わせ下さい)。