SiCと硫化物の爆発的反応

ある食器メーカー様より「1枚の棚板だけ支柱の周りを中心にSiCがはじけて、製品上にまで飛んだ」という連絡を受けました。下がその時の写真です。SiC Sulfide 1

かなり激しく表面がコーティングごとはじけ飛んでいるのが見て判ります。SiC Sulfide 4UP

又、見事に支柱の周りだけですので、支柱が原因だと推測し色々調べました。SiC Sulfide 3

工場内の支柱置き場に置いてあった他の支柱を確認したところ、黒っぽい粉が支柱の上に載っており、分析したところその粉からは酸化カルシウム(CaO)と三酸化硫黄(SO3)が多く検出されました。これら2物質は炉内昇温過程で化合し硫酸カルシウム(CaSO4)となり、硫酸カルシウム等の硫化物とSiCはある温度に達すると爆発的反応を起こします。この黒っぽい粉は、状況的にも成分的にも支柱置き場の上の天井スレートの一部が降った物と考えられます(スレート成分にはCaとSO3が含まれますので)。SiC Sulfide cause即ち今回の問題の原因は「天井スレートからの落下物が支柱の上に載り、それが炉内高温下でSiCと接触し爆発的反応を起こした」という事になります。

海外の現場でも同様の現象が起きております。SiC Sulfide 4

石膏型にもCaOとSO3が含まれますので、石膏が焼成前の製品に付着したりすると同様の現象が起こる可能性がありますので注意が必要です。

Si-SiC(反応焼結SiC)保護管

Si-SiC(反応焼結SiC)製の熱電対保護管です。SiSiC protection tubeSiSiC protection tube edge一般的な熱電対保護管はアルミナ質の物が多いですが、高強度・高熱伝導・ち密質という特徴からSi-SiC製の保護管が採用される場合もあります。但し、Si-SiCの最高使用温度は1,350℃ですので、その温度以下の焼成に限ります(1,350℃を超えてくると含浸させてある金属シリコンが徐々に出てきてしまいます)。

保護管の先端形状はストレート・ドーム型どちらも可能です。根元側に固定用の溝加工も可能です(焼成前のグリーンの状態で加工)。

Si-SiC(反応焼結SiC)ラジアントチューブバーナー

Si-SiC(反応焼結SiC)製のラジアントチューブバーナーの内筒管(外筒管の中に挿入されるスリーブ)です。Radiant tube burnner inner熱処理炉等のバーナーで使用されます。Si-SiCはセラミックスの中ではかなり熱伝導率が高い材質であり、熱効率が良いです。最高使用温度は1,350℃ですので、金属製バーナーチューブでは垂れたり劣化したりする環境でも長く使えます。穴開けの位置や数は最終焼成前のグリーンの状態で加工しますので、図面に合わせて対応可能です(焼成後は非常に硬くなり、後加工はほぼ不可能となります)。

Si-SiC(反応焼結SiC)ビーム・Si-SiCピンストッパー

前回記事に引き続き、別のSi-SiCビーム固定方法です。

上と下のビームにそれぞれ穴を開け、Si-SiC製のピンを指す方法です。SiSiC Pin StopperSiSiC Pin Stopper2

単純な方法ではありますが合理的です。写真では下のSi-SiCビームも貫通してピンが刺さっていますが、ビーム強度を少しでも下げたくないという場合は下ビームの下の穴は開けずにピンの長さを短く調節するのも良いかと思います。

尚、Si-SiCの穴開け加工は焼成前のグリーンでないと加工できません。焼成後の完成品Si-SiCは非常に硬いですので、やるとしても非常に高額な費用となり穴付きの物を新たに製作した方が安くできるくらいです。

他にも弊社が発案した非常に効果的なSi-SiCビーム固定方があり、実際トンネル炉で採用されております。状況に応じて最適な提案ができますので、ビームのずれにお困りの企業様は是非お問い合わせ下さい。

Si-SiC(反応焼結SiC)ビーム・段付ストッパー

焼成温度1350℃以下の条件ですとSi-SiC(反応焼結SiC)が使え、高強度なSi-SiCビームは炉の構造材として力を発揮します。しかしトンネル炉などで常に台車が移動する条件では、井桁に組むビーム組が台車の振動によりずれてきてしまう場合があります。それを防止する一つの方法として下の段付きストッパー形状というのがあります。2019 10 SiSiC beam with stopper1

段と段の間に上(もしくは下)のビームを組む方法です。2019 10 SiSiC beam with stopper2

この形状を組み合わせれば90度に組まれたビームはずれなくなります。

またこの方法以外にもいくつか効果的なビームずれ防止策があります。SiCビーム組みのずれ問題を解消したいという場合は、是非弊社にお問い合わせ下さい。

炭化ケイ素(SiC)の製造工程 / 現地SiC製錬工場レポート4(最終回)

中国北西部蘭州市郊外にある炭化ケイ素(SiC)製錬工場のレポート第4回(最終回)です。今回は製錬されたSiCを見てゆきます。

石英砂=1.7 : 石油コークス=1.3の割合で混ぜた原料を電気抵抗炉に投入し中心にカーボンの粉で電極を作り、そこに20,000KWを10日間通電させた結果、炉の中心温度は約2,000℃に達し、下記の様にSiCが製錬されます。

製錬イラスト_書き出し用図で示した通り、中心の電極に近い部分ほど高密度のSiC 98.5%ができ(A)、その周りも同じSiC 98.5%ですが中心よりも密度が低くなります(B)。その外側がSiC 88%の層になります(C)。この中心に近いSiC 98.5%高密度部分(A)が高品質のSiC耐火物の原料となり、この部分をいかにきちんと選別して供給できるかが品質の鍵となります。尚、高密度SiC 98.5%の周りのSiC 98.5%部分(B)は研磨材や砥石の原料となり、その外側のSiC 88%部分(C)は製鉄用の脱酸材(投げ込み材)となります。反応しなかった電極から離れた部分の原料は次の製錬に使われます。1回の製錬で1基の炉で図のSiC 98.5%~88%部分が約600トンできます。

製錬されたSiCは大きく砕かれ部位別に選別されます。SiC ingot 1この地域はステップ気候で年間降水量が約300mmと少ないですが、製錬されたSiCはきちんと管理された屋根付き保管庫にて保管されます。SiC ingot 4SiC ingot 3

下の写真のインゴットの中で、上部の粒子が粗く見える部分がSiC 98.5%の密度の少し低い部分で、その下の少し白っぽく見える部分がSiC 98.5%の高密度部分で、下側が炉の中心方向となります。SiC ingot higher densityこれを運搬しやすいように更に細かく砕き1トンバックに入れます。SiC ingot 1 ton bagSiC ingot 5この大きさの粒が流通しているいわゆるSiCインゴットです。ここからまたSiC粉砕・整粒加工会社に運ばれ、粒度別に選別されSiC耐火物の原料が完成します。

良いSiC製品を作るには良い原料の安定供給が必要不可欠です。

炭化ケイ素(SiC)の製造工程 / 現地SiC製錬工場レポート3

中国北西部蘭州市郊外にある炭化ケイ素(SiC)製錬工場のレポート第3回です。今回は実際のSiC製錬を見てゆきます。

ここには電気抵抗炉が前後左右に4基並んでおり、順番に操業してゆきます。20,000KWで10日間通電し、中心の電極付近は約2,000℃に達します。原料投入から製錬SiCの取り出しまで1炉当たり約15日間での操業です。

resistance furnaces front

terminal

石英砂=1.7 : 石油コークス=1.3の割合で混ぜた原料はクレーンで電気抵抗炉に投入されます。原料中心部にはカーボンの粉を押し固めて電極が作られます。下写真の右側の炉は製錬された後、電極から遠く反応しなかった周りの原料を取り除いた状態で、左側奥の炉は原料投入が終わり製錬待ちの状態です。

SiC smelting 11基の炉の長さは約100m、製錬されたSiCの高さは約3m、一回の製錬で約600t/炉のSiCが作られます。

SiC smelting size 2SiC smelting size 1

先の写真の反対側から。製錬後のSiCが左、これから製錬される炉が右で鋼材と断熱レンガで高く壁が作られています。left after SiC smelting right before smelting

奥の2基の炉の内、手前の炉はちょうどSiC製錬が終わったところです。

SiC 4 resistance furnacesSiC just after smelt from side壁を登って上から炉の中を撮った写真が下です。SiC just after smelt from UPまだ少し煙が立ち上っています。SiC製錬の反応後、投入された原料は当初よりも体積が減っているのが判るかと思います。コークス由来の硫黄の黄色も少し見えます。因みに右奥の炉はこれから原料を投入する炉で今は空です。この様に4つの炉を順番に操業しています。この工場のSiC年間生産量は約20,000トンです。

次回は製錬されたSiCについて見てゆきます。

炭化ケイ素(SiC)の製造工程 / 現地SiC製錬工場レポート2

中国北西部蘭州市郊外にある炭化ケイ素(SiC)製錬工場のレポート第2回です。今回はSiCの元原料を見てゆきます。

炭化ケイ素(SiC)は人工的に作られる合成鉱物で化学式はSiO2 + 3C →SiC + 2CO です。

SiO2とは二酸化ケイ素・シリカで、実際に使われる原料は下の写真の石英砂です。quartz 1quartz UPこの工場では原料置き場の地面はコンクリートかタイル地で、しっかり石英砂にネットも掛けコンタミ防止に努めています。この石英砂は主に地元甘粛省や隣の青海省産出の安定した高品質品です。

もう一つの元原料Cとは炭素・カーボンで、実際に使われる原料は下の写真の石油コークスです。petroleum cokepetroleum coke UP石英砂と同じくしっかり管理されています。この石油コークスは主に隣の青海省、そしてまたその隣のチベット自治区からも入れているとの事です。良いSiC原料を作るにはやはり良い元原料が必要不可欠です。

この2つの原料を石英砂1.7 対石油コークス1.3の割合で混ぜ合わせます。左からコークス、右から石英砂を真ん中の混合攪拌機に投入します。mixturemixture tank混合された原料はホッパーに落とされます。因みに混合原料3トンに対し製錬して出来上がるSiCは約1tとの事です。

次回はいよいよ電気抵抗炉での製錬について見てゆきます。

炭化ケイ素(SiC)の製造工程 / 現地SiC製錬工場レポート1

SiC耐火物の原料となる炭化ケイ素(SiC)は人工的に作られる合成鉱物です。現在世界で使われるSiC原料のほとんどは中国で製造されており、4回に分けて現地SiC製錬工場の製造工程等を詳しく見てゆきます。

中国の北西部、甘粛(かんしゅく)省・蘭州市から高速道路で1時間弱走ったところにあるSiC製錬工場です。SiCは電気抵抗炉で製錬される為豊富な電力が必要ですが、この辺りは黄河上流域で水力発電があます。またSiCの元原料となるコークスと石英も近くで採れる為ここに工場が建設されました。SiC smelting company entrance 1SiC smelting company transformerこの地域はステップ気候のため植林した木以外は大きな樹木がない荒涼とした山岳地帯です。工場には独自の35,000KVA変電設備があります。

SiC smelting plant environmental slogan工場内にスローガンが掲載されている通り、近年の中国の環境保全政策は益々厳しさを増し、本工場も共産党の査察を定期的に受け訪問時も査察前で操業は停止しておりました。政府の環境保全政策の為、この辺りに10数年前までは20社ほどあったSiC製錬会社が今では3社しか残っていないとの事で、SiC原料高騰の最初の原因はここから来ている事が判ります。

工場の全景写真です。2007年に設立された工場で、年間SiC製錬能力は約20,000トンで規模的には中規模クラスですが、中国でも指折りの高品質SiCを供給できる工場です。社長は地元の有力共産党代表です。SiC smelting panorama次回はSiCの元原料について見てゆきます。

酸化物(SiO2/シリカ)結合SiC プレス成形品とその金型について

酸化物結合SiC耐火物はプレス成形で様々な形状が製作可能です。

SiC millston 2プレス成形品ですので最初に金型の製作が必要です。使用条件等を確認させて頂いた上で御注文数量が継続的にある程度見込める場合は、金型代をご負担頂いた上で初回は少量生産でも対応致します。一度製作頂いた金型は後の消耗による金型更新時でも費用はこちら側で負担致します(形状にもよりますが、一つの金型で1,000個以上はプレス打てます)。

尚、我々の特徴の一つとしては金型代が他と比べ安い点ですので、新規形状をご検討の企業様は是非一度お問い合わせ下さい。