SiC棚板が割れる原因とスリット(切込)の目的

セラミック製品の焼成で一般的によく使われている酸化物結合SiC棚板(カーボランダム棚板)の割れの原因とスリット(切込)について説明致します。

SiC plate heat

SiC棚板にはこの様にスリットが入っているものが多いですが、これは炉の中で板の温度が上昇/降下する際に発生する歪を吸収する為にあります。

炉の温度が上がって行く時、中に入っている棚板は端の方から徐々に温度が上がってゆきます。また炉の温度が下がって行く時は逆に端の方から温度が下がって行き、棚板の中心部分は中々温度が下がりません。

温度降下時の棚板の温度分布イメージ写真
温度降下時のSiC棚板の温度分布イメージ写真

どの物質でも同じですが、温度が高くなると物は膨張し、低くなると収縮します。一枚のSiC棚板の中で端と中心に温度差が出来た時、すなわち膨張・収縮率の差で歪が生まれそれが板が割れる原因となります(端の温度が早く下がる=端だけが早く収縮しようとします)。

一般的には特に温度が降下する時(約800℃~300℃の間)に板の中に温度差が生まれやすく、割れやすいとされています(冷め割れ)。その歪を吸収して板が割れるのを防ぐためにスリット(切込)が施されております。木材の柱等で(湿度による)膨張・収縮によって折れるのを防ぐために入っている切込と同じ原理です。

因みに「スリットの根元からクラックが入っている場合がほとんどなので、スリットは無い方が丈夫なのでは?」という声をよく聞きますが、歪を吸収しているのがスリットですので、スリット根元からクラックが入るというのはごく自然な事で、スリットが無い板ではもっと早くから真っ二つに割れていると思われます。スリット無のSiC棚板が割れる場合は下の写真の様に真ん中から割れる場合がほとんどで、これは端の温度と一番温度差があるのが中心部分という事によるものと考えられます。

SiC棚板(スリット無)の割れ方
SiC棚板(スリット無)の割れ方
  •  焼成サイクル(炉に入れてから出すまで)が短く、焼成カーブが急な場合
  • 棚組において棚板と棚板のスペースが狭く板の中心部分に熱がこもり易い場合
  • 板の中心部分に温度の下がり難い重量物を置いて焼成する場合

も1枚のSiC棚板の中で温度差が生まれやすく、板が割れやすいという事になります。

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